マーケティングに関わっている人の中には、「ペルソナ」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかし、どのように「ペルソナ」を設定して、マーケティングに活かしていけば良いのか分からず、上手く売り上げに結びつけることができないこともあるかもしれません。
本記事では、ペルソナマーケティングの重要性やペルソナの作成方法や注意点、活用事例をご紹介していきます。効果的な「ペルソナ」を設定し、マーケティングに上手く活用したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
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マーケティングにおける「ペルソナ」とは?
「ペルソナ(persona)」とは、サービスや商品を受け取るユーザー像のことです。
スイスの心理学者が提唱し、心理学の用語を発展させ「架空のユーザー像・人物モデル」という意味でマーケティング用語としてに使用されるようになりました。
ペルソナの重要性とメリット
ペルソナを設定する目的は、ユーザーに対する理解をより深められることができます。
マーケティングにおいて、商品・サービスを利用するユーザーが何を求めているのかを理解することは何よりも重要です。
ユーザーが何を考えているのか、どのような場面でどんな行動をするかを知ることが重要と言えるでしょう。
本当にユーザーに求められているものを提供できる
ペルソナを設定することで、ユーザーが求めているものが明確になるというメリットがあります。
商品企画であれば、年齢、性別、居住地などの属性から「ターゲット」が定義されます。たとえば男性向けの筋トレ用品を販売したい場合、ターゲットは「20代、男性、独身」といった具合ですね。
しかし、属性の組み合わせだけでは、予測でユーザーの姿を思い浮かべているだけに過ぎません。そこで、ターゲットの属性情報に加えて趣味や性格、ライフスタイル、といった生活面の情報を肉付けし、実在する人物としてペルソナを定義しましょう。
ペルソナを設定すれば、商品の検討やコンテンツの作成においても、「ペルソナの◯◯さんなら、どんな商品や情報があったら助かるだろう?」といった、ユーザーの目線で様々な物事を考えることができるようになります。
共通したユーザー像を把握することができる
ペルソナ設定をすることで、商品開発に関わる全ての人物が共通の認識を持つことができます。
商品開発・マーケティングには様々な人が関わります。しかし、共通認識が無いまま進めるとスケジュールに遅延が生じたり、それぞれのターゲット像がバラバラでアイデアも出にくくなる可能性があります。
ペルソナを設定することで、より効率的かつ効果的にプロジェクトなどを進める事ができるようになります。
時間・コストの削減ができる
ペルソナを設定することで明確にユーザー像の把握ができれば、新しい施策やコンテンツ作成する際にも迷うことがなくなります。
外注で依頼する際にも、本当に効果的なのかの判断がしやすくなるため、作業時間や外注コストなどの削減が可能です。
ターゲットとペルソナの違い
よく混同される概念に、「ターゲット」があります。違いが曖昧な方も多いのではないでしょうか。違いを明確に理解しておかないと正しいマーケティングが行えません。
「ペルソナのつもりだったのにターゲティングだった」ということは、現場でもよくあります。「ペルソナ」と「ターゲット」の違いは、「人物像の設定の深さ」です。
ペルソナが「架空の人物像」を指すのに対し、ターゲットは「属性の集団」のことです。
たとえば、「30代、男性、既婚、会社員」のような属性で分類することは、「ターゲット」になります。
ペルソナの作成手順
それでは実際に、ペルソナの設定の仕方についてご紹介します。
アンケートやヒアリングの実施
まずは既にいる顧客やターゲットになりそうな層に対してアンケートやヒアリングを実施しましょう。
なるべく対面(オンラインでも可)で直接ヒアリングし、顧客の考えている深層心理を引き出すことが重要です。
まだ起業したばかりで顧客が居ない場合は、SNSのDMでアプローチして聞き出したり、Yahoo知恵袋などを参考にしたり、クラウドワークスなどでアンケートを取ってみてください。
顧客へヒアリングする際には、「YES」「NO」で答えられる質問ではなく、「平日の夜はどんな風に過ごしますか?」のような具体的な質問をオススメします。簡単な質問では、深い真理まで聞き出せないことが多いからです。
またペルソナ設定は修正を重ねていくものなので、最初は大雑把なものでも大丈夫です。
Web解析データを活用する
自社メディアがあれば、アクセス解析からユーザーの行動を分析することができます。
どのページにアクセスしたか、どの文言に惹かれてクリックしたか、などの情報を把握できるためペルソナが何を求めているかを知る手がかりになります。
Web解析には、GoogleアナリティクスとGoogleサーチコンソールの活用が便利です。無料で利用できるので、導入することをおすすめします。
顧客ニーズをグルーピングして情報整理
顧客のニーズが把握できたら、属性ごとにグループに分けましょう。下記の3つの属性を参考にしてみてください。
・地理的変数(ジオグラフィック)
都道府県、人口、気候や風土、文化・生活習慣など地理的な要因で分類
・人口統計的変数(デモグラフィック)
年齢、性別、既婚・未婚や子供の有無や学歴など人の属性で分類
・心理的変数(サイコグラフィック)
価値観・性格、ライフスタイルなどの心理的な要因で分類
・行動変数(ビヘイビアル)
購入回数、休日の過ごし方など行動に着目する分類
無理に細かく分ける必要はなく、「男性と女性では購入頻度に違いが見られる」など明らかに分類できるなというグループで分けます。データから外れすぎた空想の人物をペルソナにしてしまわないためにグルーピングを行います。
具体的な人物像の作成
収集したデータをもとにペルソナを設定します。なるべく詳細な人物像がイメージできるように、表で作成しましょう。設定する項目としては、下記のようなものがあります。
・基本情報(顔写真、氏名、年齢、性別、居住地、出身地など)
・現在の職業(業界、業種、職種、会社規模、役職、年収など)
・家族構成(既婚、独身、子供)
・ライフスタイル(起床時間、就寝時間、通勤スタイル、食事週間、休日の過ごし方など)
・趣味(好きな音楽、好きな映画など)
・性格(考え方、目標、価値観など)
・インターネット(使っているデバイス、利用しているSNS、閲覧時間、よく見るサイトなど)
細かく感じる人もいるかもしれませんが、詳しい項目によってユーザーがどんなことに困っているのか、どんな情報を欲しがっているのかなどを踏まえて、より明確に仮説が立てやすくなります。
氏名・顔写真を添える
具体的なユーザー像が見えたら、氏名をつけて顔写真を添えましょう。顔写真を添えることで、より具体的にユーザー像をイメージできるようになります。
写真は画像素材集などから使用したり、ペルソナのイメージに近い人物イラストで代用したりもOKです。
ペルソナの作り方はBtoBとBtoCで異なる
ペルソナは個人を対象とした「BtoC」のビジネスモデルのほうが作成しやすい傾向にあります。BtoBビジネスの場合は、1人の個人的都合で購入できるわけではありません。
多くのBtoB企業には、購入までに情報収集をする担当者と、最終的な決定を下す決裁者の2名が関わっています。
個人と企業、両方の側面から考慮して初めてユーザーを深く知ることができます。そのため下記のようにBtoBのペルソナ設定には、「担当者ペルソナ」と決裁する側面から見た「組織ペルソナ」の2つを設定することをオススメします。
【組織ペルソナ】
企業規模:50名規模の英会話スクール運営会社
事業の課題:新規顧客の集客に悩んでいる
組織の課題:PDCAの回し方がわからない
実現したいこと:広告からの集客最適化
【担当者ペルソナ】
役職:集客などのマーケティング担当
困っていること:情報収集しているがどんな施策が合うのかわからない
情報収集する手段:Google検索・Twitter
ペルソナを設定時の注意点
ペルソナ作成時に気を付ける点をいくつか挙げます。
理想や思い込みの顧客像にならないようにする
ペルソナを設定する際、このようなユーザーに使ってほしい、使っているだろうという思い込みや先入観で決めてしまうことがあります。それでは、実際のユーザーと乖離してしまうかもしれません。
マーケティング全てに言えますが、仮説でプロジェクトを進めがちです。根拠となるデータに基づいたペルソナになっているか確認しましょう。
デモグラフィックだけでなくサイコグラフィックも考える
具体的なユーザー像を洗い出すために、両方の視点から分析しましょう。
デモグラフィック:年齢・居住地・職業・家族構成などの定量的な属性情報
サイコグラフィック:性格・ライフスタイル・趣味などの心理的な特性
デモグラフィックはデータから設定することが可能ですが、サイコグラフィックはデータからだけでは見えてきません。
そのためサイコグラフィックを設定するためには、アンケートやヒアリングを実施する必要があります。サイコグラフィックを分析するためには、リソースが必要です。
新規ユーザーの目線で考える
既存顧客だけのデータからペルソナを設定してしまうと、潜在ニーズを持っている新規ユーザー像とズレてしまう可能性があります。
市場を拡大させるなら新規顧客の獲得は欠かせません。よって新規の顧客となりうる視点も持ちつつ、ペルソナを設定していきましょう。
複雑過ぎない、理解しやすい人物設定にする
ペルソナを作る際、複雑な設定になりすぎる場合が多々あります。具体的な設定は必要ですが、複雑過ぎると方向性を見誤る可能性があります。
不必要な要素は削除し、具体的かつ理解しやすい人物になっているか確認しましょう。
定期的にペルソナを見直す
ペルソナを設定した後も、実際にユーザーインタビューやデータとのズレがないか、都度チューニングをおこなうとよいでしょう。
初めてのペルソナ設定は、大勢の消費者から抽出した仮説ベースになるため、精度が低い場合が多いです。
また環境も日々変わるため、社会情勢などからペルソナにズレが生じる場合もあります。そのため定期的に見直すことが重要です。
写真を活用して共通イメージを持てるようにする
鮮明にイメージするために、写真付きでペルソナを作ることがおすすめです。
マーケティングや商品開発には多くの人が関わるため、共通認識として記憶に残りやすい写真の存在が効果的です。
さらに人物画像だけでなく、部屋のイメージなどもあるとベターです。
「ペルソナ」のマーケティング成功事例
「ペルソナ」を活用した企業のマーケティング成功事例をご紹介します。これからご紹介する事例は、ペルソナ効果の大きかった設定です。
Soup Stock Tokyo「秋野つゆ」
Soup Stock Tokyoは「食べるスープ」をコンセプトとした外食チェーンです。立ち上げ時に、「秋野つゆ」というペルソナが設定されました。特徴は以下の通りです。
・秋野つゆ
・37歳 ・女性 ・都内在住 ・独身か共働きで経済的に余裕がある ・都心で働くバリバリのキャリアウーマン ・社交的な性格 ・自分の時間を大切にする ・シンプルでセンスの良いものを追求する ・個性的でこだわりがある ・装飾より機能を好む ・フォアグラよりレバ焼きを頼む ・プールに行ったらいきなりクロールから始める |
ペルソナ設定した「秋野つゆ」に通ってもらうため、メニューや外観、内装や立地などを全て彼女好みに設定していきました。
ペルソナについては、公式サイトにも掲載されています。公式サイトより:https://www.soup-stock-tokyo.com/about/
“Soup Stock Tokyoが創業したのは1999年。当時女性がひとりで気軽に入れるファストフードはどこにもありませんでした。
安心、安全でおいしい食事がゆっくりと食べられて、働く女性が自分の「居場所」として共感できる場所が必要でした。
カウンターでひとり、スープをすすっている女性が思い浮かんだことをきっかけにSoup Stock Tokyoはスタートしました。
今では全国に60以上の店舗を持つようになったSoup Stock Tokyoですが、どれだけ広がっても「おいしいスープを食べてもらいたい」という思いを常に忘れず、
それがすべてにおいての判断基準になっています。”
ペルソナ設定した「秋野つゆ」というユーザー像が「Soup Stock Tokyo」のコンセプトに共感し、急成長を遂げました。
詳細なペルソナ設定があったからこそ、刺さる商品(メニューだけでなくコンセプト含む)を開発し、成功した事例です。
MEN’S TBC「三軒茶屋のコンビニ」
TBCはペルソナ設定によって、問い合わせ数を30〜40%向上させました。
TBCはMEN’S TBCをマーケティングするにあたり、三軒茶屋のワンルールマンションに住んでいる都内のA学院大学に通う20歳の男性をペルソナと決めました。
ペルソナのライフスタイルから逆算して、彼らが通いそうなコンビニを中心に、男性向けのコスメティックを販売することにしました。
よって「MEN’S TBC」の認知度が高まり、エステサロンの方の問い合わせ数が3割から4割上がるという成果につながりました。
ペルソナのライフスタイルから、ブランド認知のための適切な選択によって成功した事例です。
ペルソナマーケティングは時代遅れ?
近年になって、「ペルソナマーケティングはもう古い」「時流に合わない」といった意見をしばしば見聞きするようになりました。
”人ではなく、シーンに合わせたモノづくりが大切だと思っています。デジタルが発達し、ユーザーの背景が多様化した時代に、ペルソナの概念はマッチしにくい。”
https://careerhack.en-japan.com/report/detail/1229
という発言は、Product Manager Conference 2019での10X社代表取締役・矢本氏によるものです。「ペルソナ設定は古い」的な意見が出る背景には、要因があります。
その背景には、インターネットやスマホの普及・マーケティングツールの進化などにより、デジタルマーケティングが高度化してきているという事情があります。
ツールなどを駆使して、顧客一人ひとりのニーズにあわせたリアルタイムな接客を行うことが可能となった今、ユーザー像としてのペルソナは役に立たないのではないかという意見です。
こうした主張にも一理ありますが、だからといってペルソナが全く不要になったのかというと、そういうわけではありません。
こうした意見もありますが、どのような商品やサービスを開発していくか、あるいはマーケティングを展開していくかを考える上流においては、ペルソナ設定は有効です。
上手にペルソナが作成できるコツ
ペルソナを作成する時は、ペルソナの立場で考えるのではなく、生活している目線になることが大切です。
どんな商品だったら買うか、どんな広告ならクリックをするのか、を考えることが大切です。
何か商品を購入したときには、なぜこの商品を買ったのか?と自分に問いかけてみてください。あなたが今着ている洋服にも、沢山の洋服のなかから選んだ理由があるはずです。
消費者の目線に立って考えることこそ、マーケティングの本質と言えるでしょう。
ペルソナマーケティングは集客にも役立つ
ペルソナマーケティングが有効なのは制作物だけではありません。Web集客にもペルソナマーケティングは大いに影響を与えます。
私たちが生活している中で、いろいろな広告やキャッチコピーを目にします。しかし、全ての人に刺さるコピーやクリエイティブというのは存在しません。
広告は必ずターゲットやペルソナをもとに、異なった言葉や画像が表示されるような仕組みになっています。
心に響く言葉を生み出せるかどうかは、対象となるユーザー像をどれだけ明確にイメージできているかで決まります。ユーザー像がぼんやりしていれば、伝える内容もぼんやりとしてしまい、スルーされてしまうかもしれません。
広告費をかけるのであれば、しっかりとペルソナ設定して考案した文章を配信しましょう。
ペルソナマーケティングで売上を増加させよう
マーケティングを成功させるペルソナを考えるには、ユーザー理解が欠かせません。
今までターゲット層でしか把握していなかったユーザーがより鮮明になることで、効果的なマーケティング施策を効率的に行うことができるようになります。ペルソナを作ることで、事例として紹介しているような企業のような成果をあげることができるかもしれません。
ペルソナを活用して、より効果的なマーケティング施策やセールスプロモーションを実施していきましょう。